業務棚卸しが「作って終わり」になる理由と、順番が決まる棚卸し

業務一覧を作ったことがある会社は少なくありません。ただ、その一覧がいまも使われている会社は、あまり多くありません。理由ははっきりしています。並べただけでは、どこから手をつけるかが決まらないからです。50行の一覧を前にして、全部が大事に見え、誰も動かない。そのまま半年が過ぎ、担当が変わり、一覧は古くなります。

棚卸しを”作って終わり”にしないコツは、書き出した時点で順番が決まるようにしておくことです。この記事では、その考え方を整理します。

並べただけでは、順番が決まらない。
並べただけでは、順番が決まらない。

優先スコアで、順番を自動で出す

順番を決める物差しは、3つの数字だけです。頻度(毎日の10分は、年1回の8時間より重い)、所要時間(1回あたりに実際かかっている時間)、そして属人度(その人がいないと止まるか)。この3つから、次の式で優先スコアを出します。

優先スコア = 月あたり時間 × 属人度

時間を減らすことだけが目的ではありません。棚卸しの狙いは、その人が抜けても回る状態をつくること。時間が短くても、その人しかできない仕事はリスクとして残ります。だから所要時間だけでなく、属人度を掛けています。

優先スコア=月あたり時間×属人度。
優先スコア=月あたり時間×属人度。

1行は「担当者が1回でやりきる単位」

棚卸しが途中で止まる原因の大半は粒度です。細かすぎると終わらず、粗すぎると打ち手が決まりません。目安は「担当者が1回でやりきる単位」。「月次の請求書発行」「見積書の作成」くらいがちょうどよく、「Excelを開く」は細かすぎ、「経理業務」は粗すぎます。迷ったら「その作業だけを人に頼めるか」で考えてください。

最初から網羅しようとすると終わりません。まず1部署・20行を目標に。20行埋まれば、順番はもう見えます。

1行=1回でやりきる単位。まず20行。
1行=1回でやりきる単位。まず20行。

入れる数字は3つだけ

頻度・所要時間・属人度。この3つを入れれば、スコアは自動で出ます。所要時間は本人に聞いてください。上長の見積もりは、たいてい実際より短くなります。正確でなくて構いません、10分単位で十分です。

頻度・所要時間・属人度。時間は本人に聞く。
頻度・所要時間・属人度。時間は本人に聞く。

「属人度」は評価ではない

属人度を聞くときは、評価ではないことを先に伝えてください。「属人度4」は、その人の抱え込みを責める数字ではなく、会社が引き継ぎを準備できていないという意味です。ここを伝えないと、「抱え込んでいると責められている」と感じた担当者が、実態より低い数字を書きます。結果、いちばん危ない仕事が一覧に出てこなくなります。3と4の切り分けに迷ったら、「その人が来週から1か月休んだら、この仕事は止まるか」で判断を。止まるなら4です。

属人度4=会社が引き継ぎを準備できていない。
属人度4=会社が引き継ぎを準備できていない。

スコアの高い行から、4つの打ち手で寄せる

順番が出たら、上位の行から次の4つのどれに寄せるかを決めます。全部を変える必要はありません。

  • 標準化:属人度が高く、手順を言葉にできるもの。手順書を書き、”書いた人ではなく読んだ人”にやってもらう。
  • ツール化:頻度が高く、入力と転記が中心のもの。新しいシステムを買う前に、いま持っているもので試す。
  • AI化+確認:下書き・要約・分類が中心のもの。AIに寄せ、判断そのものは人が持つ
  • 外部化:専門性が高く頻度が低いもの。社内に技能を貯めても使う機会がない。ただし丸投げは別の属人化になるので、依頼と確認の手順だけ残す。
標準化・ツール化・AI化・外部化。判断は人。
標準化・ツール化・AI化・外部化。判断は人。

着手するのは、上位3件だけ

最後に、いちばん大事なこと。上位3件だけに絞ってください。10件着手すると、どれも中途半端に終わります。3件なら、次の面談までに進捗が出る。進捗が出ると、次の3件が始まります。棚卸しを続けさせるのは、成果ではなく手応えです。よくある失敗は「網羅しようとして終わらない」「評価と受け取られて実態が出ない」「打ち手が標準化ばかりになる」の3つ。いずれも、絞ることで避けられます。

上位3件に絞る。10件は全部中途半端。
上位3件に絞る。10件は全部中途半端。

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投稿者プロフィール

頭領CEO 土開千昭

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