脱PPAP・脱添付を実際に進める手順。社内ルールの決め方から取引先への案内文まで

「うちもPPAPやめよう」と決めたのに、気づけば数ヶ月そのまま。ツール選定の会議で意見が割れて止まった。取引先にどう伝えればいいか分からず後回しにした。結局、一部の部署だけ独自ルールで運用していて、全社的には何も変わっていない。こういう状態のまま時間だけが過ぎている会社は、決して珍しくありません。

脱PPAPが難しいのは、技術的なハードルというより「決めることが多すぎて、どこから手をつけていいか分からない」ことにあります。代替ツールをどれにするか、社内ルールをどう文章化するか、取引先への案内をいつ・誰が・どう出すか。どれも単独では大した作業ではないのに、順番を間違えると一気に停滞します。

この記事では、脱PPAPを「決める」段階から「実際に動かす」段階まで進めるための手順を、現状把握から定着確認まで順番に整理します。総務・情シスを兼任していて、旗振り役を任された方を想定した内容です。

脱PPAPが進まない理由はだいたい同じ

脱PPAPの停滞パターンには、共通したものがいくつかあります。

  • 代替ツールの選定会議で「クラウドストレージ派」「ファイル転送サービス派」「メール暗号化継続派」に分かれて決まらない
  • 取引先にどう案内すればいいか分からず、案内文の作成で止まっている
  • 「原則禁止」とだけ決めて、では実際どう送ればいいのかを決めていないので、現場が自己判断でバラバラなやり方を始める
  • 一部の担当者だけが新しい方法に切り替え、それ以外はこれまで通りZIP添付を続けている

共通しているのは、「PPAPをやめる」というゴールだけが先に決まって、そこに至る手順が具体化されていないことです。逆に言えば、手順さえ踏めば、脱PPAPは特別難しい取り組みではありません。順を追って見ていきます。

手順1:現状把握 ― 誰が・何を・誰に送っているか棚卸しする

いきなりツール選定に入りたくなりますが、その前にやるべきことがあります。自社が今、ファイルのやり取りをどんな場面で行っているかの棚卸しです。

確認すべき点は主に次の3つです。

  • 誰が送っているか 営業、経理、人事、制作など、部署によって送るファイルの性質も相手も違います
  • 何を送っているか 見積書・契約書のようなファイルか、写真や動画のような容量の大きいものか、個人情報を含むものかで、必要な代替手段が変わります
  • 誰に送っているか 相手が大企業でセキュリティポリシーが厳格なのか、個人事業主でメール添付以外に不慣れなのか、送信頻度は高いのか低いのか

この棚卸しをせずに代替ツールを決めると、「営業には便利だが経理には使いにくい」「自社は快適になったが取引先が混乱する」といったミスマッチが起こります。棚卸しは大がかりな調査でなくてかまいません。各部署に「ファイルを送る場面と相手」を簡単に聞き取るだけでも、判断材料としては十分です。

PPAPそのものの問題点や、代替手段にどんな選択肢があるかは、PPAPの問題点と代替手段を整理した記事で詳しくまとめています。ここでは手順の話に絞ります。

手順2:代替手段を決める ― 全社で1つに揃える

棚卸しが終わったら、代替手段を決めます。ここで大事なのは、部署ごとにバラバラなツールを使うのではなく、できる限り全社で1つの方法に揃えることです。

部署ごとに違うツールを使うと、取引先から見て「この会社は部署によって送り方が違う」という状態になり、案内文も部署ごとに作り直す必要が出てきます。社内でも、他部署のやり方が分からず問い合わせが増えます。運用ルールを作る側からすると、選択肢は少ないほど管理がしやすくなります。

代替手段を選ぶときの要件は、絞り込みすぎないことが大切です。目安として次のような観点で見ていくと選びやすくなります。

  • 送る側・受け取る側の双方が特別な設定や登録なしに使えるか
  • ファイルサイズの上限が自社の業務に見合っているか
  • 費用が継続的に発生するものか、無料の範囲で足りるか
  • 誰が使っても操作を誤りにくいか(マニュアルを作らないと使えないツールは定着しにくい)

全部の要件を満点で満たすツールはなかなかありません。棚卸しで見えた自社の実態と照らして、優先順位をつけて選ぶのが現実的です。

手順3:社内ルール化 ― 「禁止」ではなく「こう送る」を決める

ツールが決まったら、社内ルールを文章にします。ここでありがちな失敗が、「パスワード付きZIPの送付を禁止する」というルールだけを作って終わってしまうことです。禁止だけを決めても、代わりにどうするかが書かれていなければ、現場は結局自己判断で動きます。

ルールに盛り込むべきなのは、禁止事項ではなく手順です。

  • ファイルを送るときは、決めた代替ツールをどう使うか(操作手順)
  • 例外を認める場合、どんな条件のときか、誰の承認が必要か
  • 取引先が代替ツールを使えない・使いたくないと言った場合の対応方針
  • ルールの見直しをいつ・誰が行うか

特に例外の扱いは最初に決めておいた方がいいところです。「取引先の指定でどうしてもZIP添付が必要」というケースは実際にありえます。それを想定せずに一律禁止にすると、現場が板挟みになり、結局ルールを無視する人が出てきます。例外を許容する条件をあらかじめ決めておけば、現場が迷わず対応できます。

手順4:取引先への案内 ― 相手に負担をかけない伝え方を選ぶ

社内ルールができたら、次は取引先への案内です。ここが脱PPAPの中で最も後回しにされがちな工程ですが、実は一番気を配るべき部分でもあります。自社の都合で送り方を変えるわけですから、相手に負担をかけない伝え方が求められます。

案内文に入れておきたい要素は次の通りです。

  • いつから新しい方法に切り替わるか(猶予期間を設けるとより丁寧です)
  • 具体的にどう受け取ることになるか(メールのリンクをクリックするだけなのか、事前登録が必要なのか)
  • 変更する理由(セキュリティ上の懸念があることを簡潔に)
  • 不明点があった場合の問い合わせ先
  • 相手側で特別な準備が必要かどうか(多くの場合「不要です」と明記できると安心してもらえます)

ここで意識したいのは、案内文の丁寧さそのものより、選ぶ手段自体が相手に負担をかけないものかどうかです。受け取る側にアカウント登録やアプリのインストールを求める仕組みだと、案内文でどれだけ丁寧に説明しても「面倒だから今まで通りでいい」と言われてしまうことがあります。逆に、リンクをクリックするだけで済む仕組みであれば、案内はごく短い一文で済みます。手段を決める段階(手順2)で、この「相手側の手間」を要件に入れておくと、案内の負担そのものが小さくなります。

案内を出すタイミングも重要です。全取引先に一斉送信するのではなく、取引頻度の高い相手や、セキュリティに敏感な相手には個別に一言添えるなど、相手によって出し方を調整すると受け取られ方が変わってきます。

手順5:定着の確認 ― ルールが形骸化していないか見直す

案内を出して終わり、ではありません。しばらく運用したあとに、ルール通りに動けているかを確認する工程が必要です。

確認しておきたいのは、次のような点です。

  • 例外扱いのケースが想定より増えていないか(増えているなら、代替手段自体が現場に合っていない可能性があります)
  • 取引先から「前のやり方に戻してほしい」という声が出ていないか
  • 新しく入社・異動してきた人に、ルールがきちんと引き継がれているか
  • 実は一部の部署だけが今もZIP添付を続けていないか

ルールは作った時点がゴールではなく、運用しながら現実に合わせて調整していくものです。特に、例外が増えてきたときは「ルールを厳しくする」方向ではなく、「代替手段や運用が現場の実態に合っているか」を見直す方向で考えると、形骸化を防ぎやすくなります。

まとめ

脱PPAPが停滞するのは、意志がないからではなく、決めるべきことの順番が整理されていないからです。現状把握で自社の実態をつかみ、代替手段を全社で1つに絞り、禁止ではなく手順として社内ルールを作り、相手に負担をかけない形で取引先へ案内し、運用しながら定着を確認する。この順番で進めれば、会議で堂々巡りになることも、一部の部署だけ取り残されることも減らせます。

当社でも法人向けファイル送信サービス「TENPOFF」を開発・提供しています(β版・無料)。受け取る側がアカウント登録なしにリンクから受け取れる仕組みで、取引先への案内の負担を小さくしたいという発想から作りました。興味があればTENPOFFの紹介ページもご覧ください。

投稿者プロフィール

頭領CEO 土開千昭

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