PPAPはなぜダメなのか。廃止が進む理由と、やめた後の現実的な代替手段

PPAPをやめよう:封筒と鍵に朱色の打ち消し

添付ファイルにはパスワードがかかっている。パスワードは、別のメールで届く。同じ経路を、二回。件名も似ている。差出人も同じ。届く時間も、数分しか違わない。

これで守られている、と思っていた。でも、守っていたのは「うっかり中身が見えてしまう事故」くらいのものだった。誰かがメールの経路そのものを覗いていたら、パスワードも同じ経路で流れてくる。鍵とドアを、同じ配達員に一緒に届けさせているようなものだ。

この方式には名前がついている。PPAPと呼ばれ、長年、日本のビジネスメールの定番だった。ここ数年で「やめよう」という動きが広がっているが、なぜダメなのか、やめた後どうすればいいのかを、順番に整理する。

PPAPとは何か

PPAPとは、パスワード付きZIPファイルをメールに添付して送り、そのパスワードを別のメールで送る、という一連のやり方のことだ。「Password付きZIPを送ります」「Passwordを送ります」「Angoka(暗号化)」「Protocol」の頭文字を取った俗称で、正式な規格や技術用語ではない。多くの企業が、情報漏えい対策・誤送信対策として、社内ルールに組み込んできた経緯がある。

何が問題なのか

問題は一つではなく、いくつかの角度から積み重なっている。

PPAPの4つの穴:盗聴に無力・ウイルス検査を素通り・受信者の手間・誤送信を防げない
PPAPの4つの穴(盗聴に無力/ウイルス検査を素通り/受信者の手間/誤送信を防げない)

まず、盗聴に対してほぼ無力だという点。メールの通信経路が誰かに傍受されている状況を想定すると、添付ファイルもパスワードも同じ経路を通る。片方だけ守られても意味がなく、両方まとめて手に入ってしまう。暗号化しているつもりが、実質的には無施錠に近い。

次に、ウイルスチェックをすり抜けてしまうという問題。多くのメールセキュリティ製品は、添付ファイルの中身を検査してウイルスやマルウェアを検出する。ところがパスワード付きZIPは、パスワードを知らない限り中身を開けないため、ゲートウェイ側のスキャンでは検査できない。結果として、悪意のあるファイルがPPAPの形を借りて素通りしてしまうケースが知られている。守るための仕組みが、逆に検査の目をふさいでしまっている。

さらに、受信者の手間も無視できない。スマートフォンでは解凍アプリが必要になることが多く、外出先で急ぎの資料を開こうとして詰まる、という経験をした人は少なくないはずだ。二通のメールを行き来してパスワードを打ち込む作業は、送る側にとっては「一手間」でも、受け取る側が何十社もの取引先とやり取りしていれば、積み重なって相応の負担になる。

そして、そもそも誤送信対策にはなっていないという指摘もある。宛先を間違えた場合、多くはパスワードのメールも同じ間違った宛先に送ってしまう。誤操作を防ぐ仕組みとして導入されたはずが、誤操作そのものを防げていない。

官公庁や大手企業で廃止が進んでいる

こうした問題点が広く知られるようになり、近年は官公庁や大手企業を中心に、PPAPを廃止する動きが目立つようになった。「原則として使わない」という方針を打ち出し、社外とのやり取りの手段を見直す組織も増えている。具体的な統計や件数をここで挙げることはしないが、業界のニュースやセキュリティ関連の発表を追っていると、PPAP廃止の方針を明らかにする組織は、一過性の流行ではなく、じわじわと広がっている印象を受ける。

取引先の一社がPPAPをやめると、その相手とやり取りする側も対応を迫られる。そうやって、廃止の動きは連鎖的に広がりやすい性質を持っている。

それでも、やめられない理由

問題がわかっていても、PPAPをすぐにはやめられない企業は多い。理由の多くは、技術面よりも「関係性」にある。

取引先がPPAPを前提にやり取りしている場合、自社だけ方式を変えると、相手側の受け入れ体制やルールに合わなくなることがある。「うちはPPAPでお願いします」と言われれば、従わざるを得ない場面も出てくる。

また、社内規程に「機密ファイルはパスワード付きZIPで送付すること」と明記されている企業もある。この規程自体を見直すには、情報システム部門だけでなく、総務や法務、場合によっては経営層の合意が必要になり、時間がかかる。担当者一人が「やめたほうがいい」と気づいていても、組織として動くまでには段差がある。

加えて、これまで大きな事故が起きていないという実感も、変化を後回しにする理由になりやすい。問題は理解しつつも、優先順位としては後ろに回ってしまう、というのが実情に近いのではないかと思う。

現実的な代替手段を比較する

PPAPをやめると決めたとき、次に検討するのは代替手段だ。それぞれ向き不向きがあるので、自社の状況に合わせて選ぶ必要がある。

PPAPの代替3手段:ファイル転送サービス・クラウドストレージ共有・メール添付+運用でカバー
現実的な代替は3つ。自社の状況に合わせて選ぶ

ファイル転送サービス

大容量ファイルを送るために、専用のファイル転送サービスを使う方法がある。アップロードしたファイルにダウンロード用のリンクが発行され、そのリンクを相手にメールなどで送る仕組みが一般的だ。パスワードを別送する必要がなく、有効期限を設定できるサービスも多い。メールに添付できない大きなファイルを扱う機会が多い企業には向いている一方、サービスによっては相手にアカウント登録を求めたり、広告表示があったりと、使い勝手にばらつきがある点は事前に確認しておきたい。

クラウドストレージでの共有

Google DriveやOneDriveなどのクラウドストレージにファイルを置き、共有リンクの権限を絞って相手に渡す方法もある。社内で既に使っているストレージがあれば、追加コストなく始められるのが利点だ。ただし、共有設定を誤ると意図しない範囲に公開されてしまうリスクがあるため、リンクの権限(誰が閲覧・編集できるか)や有効期限の設定を、送る側がきちんと理解しておく必要がある。属人的な運用になりやすい点は注意したい。

メール添付のまま運用でカバーする

すべてをシステムで解決しようとせず、メール添付という手段自体は維持しつつ、運用でリスクを抑えるという考え方もある。宛先の再確認を徹底する、送信前に上長や別の担当者が確認するワンクッションを入れる、パスワードを別送するのではなく事前に電話や別チャネルで伝えておく、といった工夫だ。仕組みを大きく変えられない事情がある企業にとっては、まず取り組みやすい選択肢になる。ただし、あくまで運用でのカバーであり、盗聴や誤送信のリスクそのものをなくすものではないことは押さえておいたほうがいい。

どの手段を選ぶにせよ、一度にすべての取引先との運用を切り替えるのは現実的ではないことが多い。移行の順番や進め方については、脱PPAPの移行手順をまとめた記事で、もう少し具体的に触れている。

当社でも、こうした課題に対して法人向けファイル送信サービス「TENPOFF」を開発・提供しています(β版・無料)。PPAPに代わる送付手段を検討する際の選択肢の一つとして、TENPOFFの紹介ページもご覧いただければと思います。

まとめ

PPAPは、長年「セキュリティ対策をしている体裁」を作ってきた方式だった。だが、盗聴には無力で、ウイルスチェックをすり抜け、受信者に手間を強い、誤送信も防げない。問題点を一つずつ見ていくと、続ける積極的な理由はほとんど残らない。

それでも取引先との関係や社内規程があって、すぐにはやめられない企業があるのも事実だ。無理に一斉切り替えを狙うより、代替手段を比較したうえで、自社に合うところから小さく始めるほうが、結果的に早く着地することが多い。

投稿者プロフィール

頭領CEO 土開千昭

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